看護職のお役にたてるコラムを掲載しています。
抗癌剤療法や放射線治療、手術などのがん治療で、患者さんの身体に様々な変化が起きることがあります。そんな外見的な変化で、ネガティブになることも少なくありません。患者さんが安心して治療に専念できるように支援する「アピアランスケア」は、珍しいことではなくなってきました。今回は、このアピアランスケアについてリサーチしました。昨今、医療に従事する者として、患者さんの治療後のケアについても考える必要があるため、看護師さんもアピアランスケアについてしっかり把握したいものです。
アピアランスケアの言葉そのものの意味は、アピアランス(appearance)=出現、登場、外見、外観、身なり、ケア(care)=配慮、気配り、手入れ、看護、介護、この2つの言葉が組み合わされ、「身なり、外見を手入れする」と言った意味で使われています。
「アピアランスケア」と言う言葉は、東京都の国立がんセンター中央病院が発祥と言われています。この国立がんセンター中央病院のホームページでは、アピアランスケアを、「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化を補完し、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」と定義しています。
がん治療によって起こる外見的変化が、医療者の予想以上に患者さんの苦痛となっていることが、アピアランスケア活動につながったのだそうです。
アピアランスケアを必要とする人は、主にがん治療によって外見が変化してしまった人たちです。大きく分けて3種類あるがん治療によって起こる外見変化を挙げてみましょう。
◆手術療法
手術痕が残る
手術で乳房など身体の一部を失くす
人工肛門など
◆化学療法
頭髪や眉毛・まつ毛、体毛などが抜ける
皮膚が変化する
爪の変形
◆放射線治療
照射部位の脱毛
皮膚が変化する
治療の結果、外見が変化してしまい「自分らしさ」を失ってしまう喪失感や、今まで通りに人と付き合うことができるのかといった不安感を感じる患者さんが対象となります。入院治療が多かった以前と比べ、通院による治療が増えてきたこともアピアランスケアの必要性が高まった一因です。
そもそも医療行為ではないアピアランスケアを医療者が行うのは何故なのでしょうか?
例えば、抗がん剤治療によって頭髪が抜けてしまった患者さんがウィッグなどをつくる場合には、美容室や理容室、ウィッグメーカーを利用するのが主な選択肢でした。医療者がアピアランスケアを行うことで、物販やサービスが前提のビジネスではなく、あくまでも患者さんのQOL(生活の質)向上に徹することができます。闘病中の患者さんにも、いち早くアピアランスケアを紹介することができ、早い段階から対応が可能になることも、医療者が行うことの利点です。
また、患者さんの状態を良く分かっている医療者が対応することで、きめ細かいフォローも可能なうえ、複数の診療科や医療機関の間での情報交換や連携もできるメリットがあります。
国立がん研究センター研究開発費がん患者の外見支援に関するガイドラインの構築に向けた研究班
がん診療に携わる医療者向けの診療の手引き
◆臨床で活かす がん患者のアピアランスケア
国立がん研究センター中央病院アピアランス支援センター 野澤桂子・藤間勝子 編
最新のエビデンスや臨床経験に基づいてわかりやすく解説された、現場で役立つ!がん治療に伴う外見ケアの実践書
◆医療スタッフのためのがん患者の外見ケアに関する教育研修 基礎編
※2019年度開催の情報 2020年度の開催に関しては1月時点で未定
・主催:国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 アピアランス支援センター
・会場:国立研究開発法人国立がん研究センター築地キャンパス
・セミナーの趣旨:調査研究の結果や日々の活動の知見を活かし、単なる美容知識や技能を患者さんに提供するのではない、医療者が行う外見ケア(アピアランスケア)とは何かを学ぶ
・参加費:8,000円
国立がん研究センター がん情報サービス 医療関係者向けサイト
◆医療従事者のためのがん外見ケアセミナー
・主催:資生堂ライフクオリティービューティーセンター
・会場:希望者の申し出で開催されるため、会場や参加者は希望者で用意が必要
・受講料金:無料
・セミナー内容:がん患者さんのための外見ケア(医療従事者向け)
アピアランスケアに関連した講師資格の認定、講習会・セミナーの開催、メイクボランティアの活動支援などヲ行っています。
◆一般社団法人 アピアランスケア協会(Facebook)
病気やケガで外見を損傷した方の「一歩外に出る勇気」をサポートすることを趣旨とした協会です。
◆日本医療・健康情報研究所・乳がん治療と乳房再建の情報ファイル
乳がんと乳房再建に特化した情報サイトです。
一口にアピアランスケアと言っても、患者さんによってその対処法はさまざまです。
頭髪が抜けてしまう患者さんには、ヘアスタイルのアレンジやウィッグの装着といったケアが必要ですし、眉毛やまつ毛が脱毛したり顔の皮膚が変色したりといった患者さんにはメイクが有効な手段です。 また、爪が変形したり変色したりといった患者さんには、ネイルやマニキュアでケアすることができます。 乳がんの手術によって乳房を失ってしまった患者さんには、乳房再建という選択肢があります。
このように、患者さんの状態に合わせていろいろな面からのサポートが考えられますが、看護師さんや介護士さんがアピアランスケアを学んでおけば、全ての患者さんにアドバイスやケアをすることができます。
入院・通院のスタイルが変わりつつあるがん治療、患者さんの意識や生活も以前とは様変わりしています。
がん治療は、手術や化学療法、放射線療法が終了したからと言って、それで終わりではありません。 そのあと患者さんがどう生きていくかも治療の過程であり大事な問題です。 患者さんの治療・看護に関わっていくために、アピアランスケアを学んでおきましょう。
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