看護職のお役にたてるコラムを掲載しています。
最近よく耳にする「QOL」という言葉は、日本語では「生活の質」や「人生の質」と表現され、看護や介護の現場では重要視されています。高齢化率が世界最高の28.4%となり、2030年には国民の3人に1人が65歳以上になると予測される超高齢化社会を迎えている現代の日本において、どう長生きするかも重要な課題となっています。そういった現状だからこそ、今一度「QOL」を見直し、その向上を図るべく努めていくことが、医療や看護、介護に関わる全ての人に求められていると言っても過言ではありません。看護における「QOL」とは何か、そのために看護師さんができることは何かについてリサーチしました。
QOL=Quality Of Lifeは、ひとり一人の人生の質や生活の質を指す言葉で、医療の歴史と共に発展してきたと言えます。
QOLの概念としては、1947年のWHOの健康憲章がこれに相当するというのが一般的な説です。
WHO(世界保健機関)健康憲章
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。
ただ生きるのではなく、心身共に満たされた状態で過ごすこと、そして自分らしくあることを重視した生き方を指すようです。WHOでは、1994年にQOLを「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
QOLが注目されるようになったのは1970年頃からで、物が豊富にあり簡単に手に入るようになって、量よりも質に人々の目が移ってきた世相が背景にあると考えられています。
また、高齢化社会を迎えた現代において、ただ単に長生きするのではなく、いかに自分らしく生きるかも重要になっています。
WHOの健康憲章にあるように、病気でないとか弱っていないというだけで健康とは言えず、心理面や社会面でも充足していなければ生活の質が良いとは言えません。
公益社団法人 日本看護協会の「看護の将来ビジョン」では、
健康問題の解決にあたっては、個人の「生活の質」が重視されることになる。医学に基づく治療に加えて、健康意識・ライフスタイルや生活環境全般における発生要因の構造を見定めた上で、生活を総合的に支援することが必要となる。と提言されています。
では、QOLを向上させるために看護師さんができることは何か、具体的に挙げてみましょう。
苦痛の軽減
頭痛や腹痛、悪寒や吐き気といった患者さんの苦痛を緩和する治療や処置もQOL向上のための対策です。
話せない患者さんや我慢する患者さんもいるため、バイタルサインや表情などから苦痛を察知することも必要です。
コミュニケーション
疾病の治療や入院という非日常に置かれた患者さんは、不安を感じています。
肉体的な苦痛以外の精神的な苦痛を緩和することも、看護師の大事な役割です。
そのために患者さんの声に耳を傾け、またこちらからも声をかけ患者さんの感じていることや、隠された本音などを聞き出すことも大事です。さらに、治療に対する患者さんの理解度を推し量ることも必要です。
入院日数が短縮される傾向の近年、それに伴って在宅でのケアが増加しています。
在宅ケアでのQOL向上には、どういったことが行われているかを紹介します。
◆緩和ケア
患者さんにとっての苦痛などの身体的問題を和らげる治療や処置はもちろんのこと、不安などの精神的問題を緩和するための取り組み。
◆家族への支援
患者さんのみならず家族も、日々のお世話で疲弊していることが考えられ、そういった家族の精神的なフォローを行います。
また、いつまで続くのかといった不安や、療養上の疑問などにも的確に対応できるように取り組みます。
◆急変時の対応
患者さんの急変時に緊急で往診することや、入院病床を確保しておくことが必要になります。
◆環境の整備
患者さんが少しでも快適に過ごせるように、自宅の環境を整備するためのアドバイスなども行います。
がんのような命を脅かす病の終末期患者さんのQOL向上のための取り組みを紹介します。
◆身体的ケア
終末期においては緩和ケアが特に重要になります。苦痛や不快感の軽減などの支持療法と同時に、栄養面でのサポートや体を清潔に保つことで患者さんのストレスを少なくすることができます。
◆精神的ケア
病室を患者さんにとって落ち着ける環境に整えることや、不安や恐怖感を少しでも取り除くための取り組みが重要です。心のケアを含む緩和ケアを早期から行うことで、QOLの向上はもとより、生存期間が延長する可能性があるとも言われています。
ただ長生きするのではなく、自分らしく生きていくことを大切に感じる人が多くなった現代において、QOLの向上は看護師さんを含む医療従事者にとって重要な課題だと言えます。
患者さんやご家族の人生をよりよくするためのお手伝いができるように、頑張りましょう!
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