看護職のお役にたてるコラムを掲載しています。
看護師さんの働く現場と言えば、病院やクリニックがすぐに思い浮かびます。他にも特養や老健、有料老人ホームなどの介護施設も近年増加しています。そんな看護師さんの職場として最近人気なのが「事業所」です。一般企業内で働く看護師さんを「産業看護師」と呼びますが、その仕事内容やなるための方法がよくわからないという人も多いのではないでしょうか?人気の高まっている「産業看護師」の仕事内容、必要な資格、メリット・デメリット、保健師との違いなどを詳しく紹介します。
まずは「産業看護師」がどういったものなのかを紹介します。
日本産業衛生学会の産業看護部会のサイトにおいて産業看護とは、「事業者が労働者と協力して、産業保健の目的を自主的に達成できるように、事業者、労働者の双方に対して、看護の理念に基づいて、組織的に行う、個人・集団・組織への健康支援活動である。」と定義されています。つまり、企業で働く人たちの健康を守ることが主な仕事です。
日本看護協会の「平成29年看護関係統計資料集」によると、看護師として就業している人の数は1,660,071人で、そのうち病院に勤務する人は1,004,272人で診療所に勤務する人は342,094人です。病院・診療所に勤務する人は、総数の81%以上にのぼります。一方、事業所に勤務する看護師さんの数は9,175人で、総数のわずか0.6%です。
企業で働く産業看護師さんの実際の業務内容をご紹介します。
健康診断
事業所に従事する人たちの健康診断の実施や、その診断結果の整理など従業員のヘルスチェックと、その結果に基づいて健康指導や健康相談などを行います。
メンタルヘルス対策
近年特に企業が重視しているのが、従業員のメンタルヘルスケアです。2015年に厚生労働省が、従業員50名以上の企業にストレスチェックを義務づけたことが影響しています。
緊急時の対応
職場での事故や企業内での感染症発生などの緊急時に、応急処置や医療機関への連絡などの対応を行います。
それ以外にも、新薬などの治験業務をサポートする治験コーディネーター(CRC)や、治験のモニタリングをする臨床開発モニター(CRA)といったさらに特殊な産業看護師の仕事もあります。
続いては、産業看護師になるためにはどうすればいいかをご紹介します。
産業看護師として働く際に必要な資格は「看護師資格」のみです。企業の求人に応募し、採用されれば産業看護師として勤務することができます。特に応募条件が設定されていなければ、新卒の看護師さんでも産業看護師になることができます。
ただ、臨床経験が必要な求人や保健師の資格が必須と言う求人も、中には存在します。事業所内の医務室での勤務などの場合、従業員の怪我や体調不良に対応する必要があるため、臨床での経験やスキルが大いに役に立ちます。そういった意味では、ある程度経験を積んだ転職者の方が有利かもしれません。
続いては、産業看護師として働く上でのメリット・デメリットをご紹介します。
◆土曜日、日曜日、祝祭日がお休み
◆夜勤がない
◆デスクワークが多く体力的に楽
◆医療処置の機会が少なく、緊迫した局面などもほぼ無く精神的に楽
◆給料や休日、福利厚生など待遇面で優遇されている
勤務時間が短く日勤のみで、土日祝祭日がお休みなので、規則正しい生活を求める看護師さんにはおすすめです。また、体力的にも厳しい病棟看護師さんと比べると、体への負担は軽くなりそうです。
◆夜勤が無い分給料が少なくなる可能性がある
◆ビジネスマナーやPCスキルを要求される
◆医療処置や看護に関するスキルが低下する可能性がある
◆同僚や先輩など頼るべき“看護師”がほとんどいない
夜勤や休日出勤がない分、収入は少なくなってしまうかもしれません。看護や医療に関する知識やスキルを維持しづらいので、病院勤務に復帰することが難しいこともあります。
産業看護師とよく似た職種に産業保健師があり、この2つをまとめて産業看護職と呼ぶ場合もあります。では、産業看護師と産業保健師はどう違うのかを紹介します。
保健師は看護師資格の上位資格です。
看護師資格を取得後に所定の保健師養成課程(1年以上)を修了し保健師国家試験に合格することで、保健師の資格を取得することができます。ただし、4年制大学の看護系学部で看護師と保健師の国家試験を一度に受験することができるカリキュラムも存在します。
看護師は看護やケアの専門家ですが、保健師は健康管理や保健指導など予防のプロです。
事業所内で働く産業看護職である2つの職業の違いは、勤務する事業所によって大きく違うこともあれば、ほとんど同じ業務である場合もあります。
例えば、事業所内に産業看護職が1人しかいない場合には、それが保健師さんであっても看護師さんであっても、従業員の健康管理やメンタルヘルスの管理、緊急時の対応など業務はほぼ同じものとなります。
一方、看護師さんと保健師さんの両方が勤務している場合には、看護師さんが従業員の怪我や体調不良のケアを主に担当し、保健師さんが健康診断の実施やその結果の管理から保険指導といった業務を担うといった分業になる場合もあります。
産業看護師は求人が少ない上、人気の職業なので狭き門となっています。
そんな産業看護師に採用されるためには、志望動機でしっかりアピールする必要があります。
新卒・転職の2つに分けて、産業看護師に応募する際の志望動機の例文をご紹介します。
看護大学の学生として様々なことを学んできましたが、予防医療の重要性を痛感し看護師と保健師の両方の資格を取得し、特に保健師として企業に従事する皆さんの健康を守る仕事がしたいと貴社を志望しました。商社のOLとして働いていた姉が、軽いうつ病になって退職したこともあり、メンタルヘルスに興味を持ち、自分なりにいろいろ勉強もしてきました。従業員のメンタルヘルスチェックに積極的な貴社に従事する方たちの健康管理に携われましたら幸いです。
ポイント
新卒の場合、臨床経験がなく保健指導などのスキルも未知数なのでなぜ産業看護職を目指したのかをしっかり伝えることが大切です。また、志望する企業の特徴を盛り込んだり、産業看護職としてのやる気をアピールしたりしましょう。
大学病院で外来・病棟・オペ室の看護師として、8年間勤務してきました。
結婚を機に退職し、心療内科クリニックで看護師として4年間勤務しましたが、病を未然に防ぐ予防医療の必要性を再認識し、保健師の資格を取得しました。
看護師としての経験を活かし、新たな保健師のスキルをぜひ貴社の従業員様の健康管理に役立てたいと応募いたしました。
ポイント
転職者の場合臨床経験や、もしあるのであれば保健師の資格をアピールすることが必要です。近年社員のストレスチェックには敏感な企業が多いので、メンタルヘルスに関する経験やスキルがあれば必ず書き添えましょう。
病院やクリニックと違い、一般企業での勤務になるので応募先の企業の情報は最低限収集し、企業が求める人材に合っていることをアピールできるように心がけましょう。
産業看護師は求人数が少なく狭き門ですが、体力的にも楽で勤務時間や休日の面でも優遇されている人気の職種です。就職・転職などで迷われている看護師さんは、目指してみてはいかがでしょうか?
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